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小説「自転車旅行のつもりが・続編」 その2
紅葉だって・・・

確か今は、梅雨明け間近の初夏の時期だったはず?
と、言うことは数ヶ月もの間、気を失ってたのか。

恐る恐る、その男に聞いてみることにした。

私「あの~、今何月です?、ちょっとまだ頭がぼ~っとして記憶がはっきりしないもので・・・」

男「今?・・・7月ですよ。」

私「えっ?あの紅葉って?」

男「ああ、ここは紅葉で有名なところなんですよ、綺麗でしょう!結構穴場なんですよ。でも、もう直ぐ見ごろは終わりですけどね・・・笑」

私「そうか、この辺って紅葉が早いのか!まあ、最近の異常気象もあって、いろいろとあるのだろうな。しかし、てっきり、私が秋までの数ヶ月気を失っていたのかと思ってしまった。良かった」

そして、しばらくこの辺りの名所を聞きながら、その男と一緒に山を降りて行った。
どうやら、住所を聞くと、かなり走ってきてたらしく、家まで戻るのに2~3日はかかりそうだ。
そこで、どこかこの辺りで泊まれるところはないか聞いてみると、彼の家でよかったら、今晩泊めてくれるとのことだった。

これは、ラッキーと思い、すぐさまお願いして、彼の家まで一緒に行くことになった。

山を降りること、約1時間はかかっただろうか、私は自転車だが、彼は歩きなので、押しながらの移動だったし、そのせいもあって、結構時間を費やしたのだろう。

日が暮れて、真っ暗になったころ、彼の家に到着。
辺りには、ポツポツと家があるが、そんなに寂しいところではなさそうだ。
近くに神社か広場があるのか、かなり赤々としてて、何か夏祭りでもあってるのだろうか!

彼の家に入ると、家族が暖かく迎えてくれた。
奥さんと娘さん。
その娘さん、年は20歳前後か、とても綺麗な子だった。

妻子持ちの私としては、そんな気持ちを抱くのは良くないことだが、ここはまあ独身ということで通しておこうかと・・・(笑)
自転車に乗ってるだけあって、結構若く見られてるのかもしれないし・・・

部屋に入ると、前もって、連絡をしていたらしく、夕食の準備までしてくれたようだ。
お酒も少々頂き、とてもいい気分になったころ、娘さんが祭りに行きませんか?と誘ってくれた。

私「え?祭り・・・ですか」

娘「はい、今日は年に一度のお祭りなんですよ! 直ぐ近くの神社でやってますので、良かったら一緒にいかがですか?」

この誘いに乗らない男は居ないでしょう!

すぐさま・・・
私「はい、喜んで・・・!!」

そう言うと、支度をしてくるからと、娘さんが奥へと引っ込んだと思ったら、数分後に浴衣姿で現れた。
いや~たまりません!
自転車旅行に出て、初めていい気分を味わいました。

そして、ほろ酔い気分のエロ親父・・・いや私と・・・二人きりで、神社までデートです。
このときだけは、妻や子供のことをすっかり忘れてしまいました。

道中、私は祭りのことについて聞いてみました。

私「この祭りってどんな祭りなんですか?」

娘「月を敬う祭りなんですよ! 年に1度、月がこの神社の真上を通過するタイミングがあって、そのタイミングが毎年この時期なんです。」

・・・昔からの言い伝えで

月は地球の周りを回って、いつも地球に住んでる人たちを見守っています。
つまり、月は地球にとっては守り神というもので、年に一度、その感謝の意味を示すために、丁度真上に来る時期に祭りを行い、月を敬うとのこと。

私「へ~!そうなんだ。普段何気に見てる月だけど、そんな慣わしがあったとは知らなかったなぁ!」

神社に着くと、露店がいっぱい立ち並び、たくさんの老若男女が楽しんでました。
私も、すぐに溶け込んで、地元の人たちと踊り、お酒もいっぱいもらい、楽しませてもらいました。

それから1時間は経ったでしょうか。

気分も最高潮に達した頃、ちょっと娘さんを神社の裏へと誘いました。
決して変な気持ちじゃないですよ。(半分は・・・)

表の賑やかさと比べて、神社の裏は、とても静かです。
それに星空がとてもロマンチックな気分にさせてくれます。

そして、草むらに二人腰掛け、のんびりと夜空を眺めていると、なんだかこのままずっと一緒に居たい気分になってきました。

妻や子供のことを忘れて・・・
どうせ、ひとり旅だし、たまには、いいよね~
こんなことは、滅多にないことだし。

夜空には、まあるい月。

私「綺麗な月ですね・・・」

娘「本当、満月になるのはこの時期だけなんですよね!とても綺麗な月です」

私「なんで、月って黄色く見えるんだろうね・・・」

私は、何気なくつまらない質問で彼女の気を引こうとしてみた。

娘「ええ!なんで黄色いんでしょうね。 でも黄色い月もいいけど、東の空の赤い月も綺麗ですよね!」

私「本当だ!赤い月もいいねぇ・・・赤い月?・・・・・」





そうです、東の空にも月がもう一つ、しかも赤いのです。

私「何、あの月は?・・・太陽じゃないよね?何?」

娘「また、冗談を・・・・! 本当面白い人なんですね。 でも2番目の月はなんで赤いのでしょうね。 それに、もうすぐ3番目の青い月も出る時間だし!」

私「え・・?月って・・ひ・ひとつじゃないの?」

娘「かなり酔われてるんじゃないですか? それとも冗談がお好きだとか? 3つの月にむきになるのって」


え、まじ? 月が3つって、ここは地球じゃないの?
どう見ても地球だけど・・・別の惑星なの?

もしかして、今までの出来事って夢じゃないってこと?

私は、また何がなんだか判らない状況に陥り、唖然としてしまった。
私の顔色を見て、酔って気分を悪くしたのだと思い、娘さんは家まで連れて帰ってくれたようだ。

それから朝まで寝込んでしまったようです。

~続く~
小説「自転車旅行のつもりが・続編」 その3へ
小説「自転車旅行のつもりが・続編」 その1
~「1000年後の地球」~

青い星、海に囲まれた星・・・だったはず!
1000年後の地球には、そんな素晴らしい情景なんて、ひとかけらも残っていない。

核により破壊された自然。
人間が作った過ちに自ら命を絶ったのだ。

この荒れた星を見つけたのは、この銀河系から100万光年離れた星聖からきた種族。アルファ星の異星人である。

この星に唯一生き残った人物。
その人物の心の中を読み取り、過去の出来事から、この星に何が起こったのかを探ろうとしていたのだが、あまりの空想力に理解の範囲を超えていたところだった。

あらから1年。
まったく進展はないまま、この人物の空想劇を目の当たりにして、いいかげんあきらめる時が来たようだ。

異星人たちは、その男の研究をあきらめ、自分達の星に帰るべく、乗ってきた宇宙船を発進させた。
ここから、100万光年先の自分達の星へ戻るのに、この星の技術でも約1年はかかる。

そして、地球から100光年は離れたころだろうか、船内の格納庫で物音がした。
何だろうと、異星人の一人がその格納庫に近づくと。

あの男であった。


私「お前達、俺をどうする気だ。前からおかしいと思って、騙された振りをしてたのだが、まさか異星人だったとはね~! おかしいと、思ってつけてきたら、こんなことに!」

私「1000年も前に地球上の人物が滅びたって? 初めは、信じられなかったけど、嘘かどうか、こっちも騙された振りをして、お前達の動きを探ってたってわけよ!」

私「こうなったら、お前達の星に連れっててもらおうじゃないか」

これは、困ったことになった。
異星人の星では、条約で他の種族を連れて帰ることは禁止されている。
未知のウィルスの感染を防ぐためだ。

どうしよう!

異星人は、考えた。
このまま、宇宙船から放り出すことも出来るが、それじゃあまりにもかわいそうだ。
そこで考えたのが、最寄の無人の星に連れて行き、そこが自分たちの星だと言って、置いていくことだ。

宇宙船はそのままワープ速度を維持しながら、近郊の無人の星を探した。

そのとき、船に異常が発生。
ワープ航法中に、宇宙嵐に遭遇し、時間の歪みが発生したらしく、ワープエンジンに支障を来たした。
さらに、大きくコースを外れてしまったようで、まったく知らない宇宙に飛び出してしまったようだ。

なぜ、時間の歪みがここで発生したのか不明だ!

そのとき、船のセンサーが一つの星を発見。
青い星である。

コンピューターにより探知してみると、偶然にもこの男に合う環境のようだった。
直ぐにでも、降ろしたい気が先走り、充分な調査も行なわないまま、この星に男を転送し、すぐさま離れたのだった。

男を降ろした途端、時間の軸が戻ったようで、船は自分達の星へとコースへを戻していった。


あれから、何時間経ったのだろう?
私は、目覚めた!

私「あいたたた!」
どうも、この星に転送されたときにどこかで手足を擦りむいたようだ。
実に手荒いことをしてくれる異星人だ。

しかし、ここはどこだろう?
あの異星人はどこにいるのか?この星はあの異星人の星なのか、まったく検討が付かない。
しかし、周りには地球とまったく同じ植物が生えている。
今吸っているのは、空気だろうか?

改めて、周りを見渡すと、山だ。
地球と同じ、まったく同じ景色が目の前に広がっている。

また、あの異星人の仕業か!
幻覚を見せられても、もう騙されはしないぞ!!

その時、遠くから何か音がする。
何か叫んでいるようだ。
それがだんだんと近づいてくるのだ。

そして、ある程度近づいたときに判った。

人間だ!!

おい、おい、幻想か?それともこの星の生物なのか?

すると、その人間らしき生物が近づいて来て喋った。

この星の男「大丈夫ですか?怪我はないですか?」

私「えっ?日本語・・・俺、判るの?地球って星からきたんだけど?」

私「ここはなんて星???」

なんか、よく判らないが、つい自分の星の言葉で喋ってしまった。

この星の男「もしかして、崖から落ちたときに少し頭を打ったのかもしれないですね!覚えてますか、自分の名前や住所!」

私「えっ?名前?住所?って地球の?それに崖から落ちたって・・・ここ地球なの?」

この星の男「自転車でこの山を降りていたんだと思いますが、この辺りは先日の雨で地盤が緩んでいて危険な状態だったんですよ!」

この星の男「あなたは、そこの上の道で、突然土砂が崩れて、自転車もろともここに落下したんですよ・・・覚えてません?」

私「自転車・・・?」

この星の男「そう、横にあるのが、あなたの自転車でしょ?」

その男が指差す方向を見ると、確かに自転車がある。

男「なんか、訳がわからなくなってきたが、今度こそは本当なのか?自転車旅行してたのは事実でいいんだろうか」

男「こんな梅雨の時期に自転車旅行なんてするもんじゃなかったなぁ」

その男に支えられて、山を一緒に降りることにした。

その途中、一人の老婆とすれ違った。

すれ違いざまに私に言った。

老婆「この山には、不思議な力をもつ狐がおってのぉ!良く騙されるんじゃ・・・」

そういい残して、去っていった・・・・


空は茜色!

山は赤く染まってる!

いや、紅葉だな・・・

紅葉・・・

え、紅葉だって?

紅葉って秋・・・・??





~続く~
小説「自転車旅行のつもりが・続編」 その2へ
小説「自転車旅行のつもりが」その7: 最終回:現実へと~
■7「最終回:現実へと~」

目が覚めた。

どれぐらい気を失っていたのだろうか?
周りが白く見える。
何か、見覚えのある情景だ。

周りに人影はない。
もちろん、妻や子供も居ない。

白い壁に、窓。
この消毒の匂い。

そう、あの時の病室に戻っているようだ。
また、繰り返すのか・・・

このあと起こることは、だいたい判る。
病室のドアが開いた。

それ見ろ、妻とそっくりな看護師が来るぞ!
今度は、なんと言ってやろうか。

そして、中に入ってきたのは、妻の顔をした看護師でも、ベテランの看護師でもなかった。
そこに立っているのは、子供を連れた女性だった。

そう、私の妻と子供だったのだ。

妻「あなた、大丈夫?病院から電話があって、あなたが自転車で旅行中に事故にあったって言うから」

私「えっ?事故?」

妻「急いで、飛んできたのよ。先生に聞いたら、岸壁から誤って海に落ちたって言うじゃないの。
でも、軽い脳震盪だけだったって言うので、安心したわ」

私「海に落ちたって?また、夢か・・・もう、いい加減にして欲しいな」

妻「夢って?ずいぶん気を失ってたんで、仕方ないでしょうね。これ、あなたが書いた手紙でしょ!ちゃんと行き先を書いてあったから、病院から電話があった時に直ぐ判ったのよ」

確かに私が書き残したメモに間違いなかった。
しかし、その後の記憶がない。
海岸なんて走った覚えがないぞ。これも夢じゃないのか・・・
なんか、騙されているような気がしてならない。

いや・・・・
そう言えば、海に向かって真っ直ぐに走ったあの日・・・
てっきり、道を間違えたか、あの看護師に騙されたかと思っていたが?

そう言うことだったのか!
参ったなぁ!自転車旅行に出たはいいが、途中で事故って病院でうなされていたなんて誰にも言えない!

こうして、私の一週間の休暇は、自転車事故から、訳のわからない夢にうなされて終わってしまった。
なんとも、人騒がせな、夢だった。
こんな、おかしな夢は初めて見た。
しかし、良かった。本当に良かった!

今度ばかりは、いいかげんに真実なんだと確信した。

そして、妻と子供が、病室から出て行った・・・



病室の外には2つの影。
妻と子供の影だ!

とにかく、疲れた。
夢見て疲れるなんて、おかしな話だ。
もう一休みすることとしよう。
今度は、もっと穏やかな夢を見せてくれよ!

そして、私はゆっくりと目を閉じた・・・・・・。



その時、病室の外では・・・

子供「彼は、まだ君を妻という人間と思っているのかね?」

妻「はい、しかし、今度はその妻という人間になりきってみようかと思います。 そうすれば、彼の本当の記憶を戻す事が出来るかもしれません。」

子供「そうか、しかし丁寧に扱ってくれよ! 大切な生き残りなんだから」

妻「そうですね!何しろ1000年もの間、氷の中に冬眠状態で閉じ込められて居たんですものね。
1000年前に、ここで何が起こったのか、過去を知ることが出来る最後の生き残りですもの・・・この星の!」

子供「そう・・・この星の!」

妻「しかし、あなた、今度は、彼の子供という人間になりきるつもりなの?」

子供「そう、私には、この体が合っているような気がするんだ」

子供「それにしても、彼の記憶を現実化するのは、とても苦労したな。 この星の人間は、こんなにも空想力が豊かだなんて予想外だった・・・・!
何度も流れの転機を強いられたよ!!」



<終わり>


■「エピローグ」

長い間、訳のわからない長編ドラマに付き合って頂き、ありがとうございました。

自転車で旅に出た彼の身に起こったこと、それは単なる事故ではなかった。
海に向かって走っていた彼。
その時、地球に突然の異変が・・・

地球上にある核施設が、突然謎の大爆発を起こし、生物全てが滅亡するという、一瞬の出来事であった。
運良く、海底の奥深く沈んだ彼の体は、氷の中に1000年もの間、閉じ込められていたのだった。

1000年後、この地球の近くを通りかかった異星人。
その異星人に発見され、この星の調査が始められた。
つまり、この星で唯一生き残りであった彼の1000年前の記憶を蘇えらせようとしたのだ。

しかし、それは「記憶」というより、彼の凄まじいばかりの「空想力」を蘇えらせたに過ぎなかった。

THE END
小説「自転車旅行のつもりが」その6: 真実はどこに~
■6「真実はどこに~」

休暇も最後となり、家族団欒での夕食となった。
一週間というのは、長いようで、過ぎてしまえばあっという間だ。
子供の教育の話、最近のTVの話など、めったに会話がなかっただけに、とても楽しめた日々だった。

普段、平日に休めなかったし、ましてや朝早くから夜遅くまで仕事だったので、ほとんど子供との会話もなかった。
この一週間、自分の子供がこんなに成長していたのが、はっきり分かった。

しかし・・・・・
そんな団欒のひと時、突然、玄関で何やら物音がした。

その音に反応して、子供が玄関へ!
そのあとを追うように、妻が!

そして、私が玄関に行き、そこで見たものは・・・

一人の見知らぬ男が玄関に勝手に入り込んで、何か言っている。
自分がここの住人だと、訳のわからないことを言っているのだ。
家族団欒を壊されて、気が立っていた私は、その男を怒鳴りつけた。

私「おい、いいかげんにしろよ!警察呼ぶぞ!」

その男は、慌てて飛び出していった。

次の瞬間、ハッと気づき、私と妻は立ちすくんだ。
そう、私が夢だと思っていたことが、現実で起きているのだ。
二人で顔を見合わせ、だんだん血の気が引くのを感じた。

しかし、その男は私ではなかった。
いや・・・・私だったのかもしれない。

またか・・・・!
どういうことなんだ。

また、現実と夢の境がわからない状況で、正気を取り戻そうと、私は妻と子供を一生懸命抱きしめていた。
もう、家族を失いたくない。
その思いでいっぱいだった。

すると、私たちのすぐ後ろで何か気配を感じた。
誰か居る。先ほどの男なのか?
そっと振り向いた。

そこに立っているのは、あの刑事だった。

刑事「いやぁ、探したよ!どこに居るのかと思って見つけるのに苦労したよ。まさか、過去に戻っていたとは知らなかった」

私「どういうことなんです?戻っていたって、どういうことなんですか?」

刑事「タイムスリップだよ。このような状況になっては、仕方ない。本当の事を言おう。
実は、私は刑事ではないんだ。今から1000年先から来た人間なんだ」

私・妻「え・・・・・・・・?」

男「実は、今から1000年先の話になるが、私たちは時空を自由に操作して、過去の物質を未来へと移動させる実験を行なっていたんだ。
その実験中に、時空に揺らぎが発生し、ある時間軸に歪が出来た。
その歪を調べてみると、この時代の時間軸と一致していたと言うわけだ」

私「何を言っているのか、さっぱりわからないんですが」

男「あっ!ごめんごめん。まだ、この時代にタイムトラベルっていうのは、無かったんだったね」

男「実は、その移動した物質というのが、目に見える物質ではなかったんだ。やっかいな事に、それは人間の“心”だったんだ。
それがひとつの心ではなく、何人かの心と混ざり合い、この時代に移動してしまった。その時間が、今から1時間後のこの場所だ」

私「えっ!」

男「はっきり言おう、その心は、君の奥さんの中に入り込むのだ」

3人の男の妻。
妻に似た看護師。
別々の人間の心が、彼女を多重人格にしたのか!

・・・って、本当かよ!また怪しいぜ。
もしかして、裏から、これは「ドッキリ」でした・・・なんて出てくるんじゃないだろうな!!

男「そして、君の奥さんが、この先1000年後の未来を変えてしまった」

それを聞くと、妻は倒れてしまった。
私「おい、大丈夫か。ほら見ろ、お前が変なこと言うから気絶したじゃないか!」

男「この場所で、その心が現れた瞬間、タイムスリップさせ、元の世界に戻すことが出来れば、未来は変わらないはずだ。
しかし、本人が気絶してると、どうなるのか、分からない。」

私「おいおい、いいかげんにしろよ。まるで作り話みたいじゃないか・・・」
私「そんなのSF小説の世界だよ。マジかよ!!」

そして、私は妻を起こそうと、しきりに呼びかけた。
私は、何度も妻を起こそうとしたが、まったく反応がない。
それどころか、自分の意思で起きないようにしてるようにも思えた。

男「もう、遅い!時間が無い。あと1分だ!」

私「えっ?1分だって・・・どうしよう」

私は、妻をしっかり抱きしめた。しっかりと!

次の瞬間、辺りは真っ暗になり、私は、またどこかに移動したようだ。

そのうち、意識は薄れていった。

<~続く~>
小説「自転車旅行のつもりが」その7へ
小説「自転車旅行のつもりが」その5: 振り出しに~
■5「振り出しに~」

私「ところで刑事さん、妻は何か事件でも起こしたんですか」
刑事「いや、それは話せない!申し訳ないが、まだ君に話す訳にはいかないんだ」

しかし、先ほどの病院で夢を見たのは、もしかして、もう一人の男が死ぬ前に私に伝えたかったことなのか?
彼の見た情景を、私にそっくり見せてくれたのか!

妻に似た看護師。どうも、引っかかる!
それに、保険証まで書き換えられているなんて・・・

とにかく、電話だよ!
誰かに、電話をしないと。
と思い、受話器を取った瞬間・・・・

体に電気が走ったような激痛が・・・
一瞬、目の前が真っ暗になった。
我に返った瞬間、直ぐに辺りを見回した。

今度は、何も変わってない。良かった。
電話器が、ショートしていたのだろうか!

私は、刑事さんに、伝えようとしたとき・・・
居ない、刑事さんの姿が見えない。
さっきまで、隣に居たはずなのに・・・

しかも、何となく部屋の雰囲気が変わっているようだった。
ふと、テーブルの上に目をやると、何か置いてある。
そう、それは妻へあてた手紙だった。

しかし、おかしい!
この封筒、封は糊付けしてないが、まったく開けた形跡がないのだ。
その時、外で物音がした。
バイクの音だ。

何だろう?と外に出ると、さっきまで明るかったのに、もう薄暗くなっている。
そのバイクは新聞配達だった。

でも、うちは、夕刊なんて取ってないのに、間違えて入れて行きやがったな!と思い、仕方なく新聞を取り出した。
しかし、その新聞は夕刊でなく、朝刊だった。
あれっ?朝刊を入れ忘れていたのかな?
と、新聞に目を通した時・・・

なんと、日付を見ると、私が自転車旅行に出発した日だった。
あわてて部屋に戻り、時計を見ると・・・朝の5時半。

これは、一週間前に家を出発した時間じゃないか。
そう言えば、出発するときに新聞配達のバイクとすれ違っていた。

どういうことなんだ!
そして、リビングのテーブルに目をやると、先ほどまで置いていたはずの手紙がなくなっている。
それよりも、私がパジャマ姿になっている。

恥ずかしい。
いや、そういう問題ではない。
どういうことだ・・・

その時、寝室で何やら物音がした。
誰か居るのかと、寝室に行ってみた。

部屋に入った途端、またビックリした。
妻と子供が寝ているではないか。
今まで誰も居なかったのに、狐につままれた思いだった。

そっと、妻を起こして、今まであったことを話してみた。
初めは、あきれて物も言えない妻だったが、次第にあまりにもくだらない私の夢物語にお互い喧嘩していたことも、どこか吹っ飛んでしまったようだ。

話を聞くと、さっきまで一緒に寝ていたと言うではないか。
つまり、まだ、どこにも出発していなかったのだ。

そう言えば、ここのところ推理小説やら、ミステリーなんか見まくっていたからな!
それが夢に出てきても、おかしくないのかもしれない。

私は、決心した。自転車旅行は止めだ。
一週間、家族と一緒に過ごそうと決めた。
この時ほど、家族の有り難味が判った事はなかった。

そして、この一週間と言うもの、久しぶりに家族で楽しく過ごす事ができ、あの変な夢のことなんて、もう頭の中から消え去った。

<~続く~>
小説「自転車旅行のつもりが」その6へ