小説「自転車旅行のつもりが」その4: 妻の隠された謎~
■4「妻の隠された謎~」

私は、なんとなく納得したような、してないような気分だったが、直ぐに退院することとなった。
受付にて、看護師さんから・・・
「あなたのバックに保険証が入っていたので、勝手ながらお借りしていましたよ」と・・・

一週間前に、あわてて詰め込んできたから、保険証も持ってきていたのか!

そして、その保険証に目を落とした。
あれっ!家族の名前が無い。
しかも、私が独身になっている。何てことだ。

私「これ、本当に私の保険証?」
看護師「はい、あなたのバックに入っていましたよ」

私「う~ん、判らない、確かに私の名前だ。しかも私の住所だ」

これも夢か?
こんな時に良くやることだが、思いっきり頬をつねってみた。
・・・物凄く痛い。
夢ではなかった。

そうだ、電話だ。
私「看護師さん、すいません電話貸してもらえますか?」
家に電話してみよう。

その時だった、病院の入口にスーツ姿の男が現れた。
その男、私を見るなり、「○○さんだね。」
そして、私にあるものを見せて言った。
そう、その男は刑事だった。

刑事「この写真の女性をご存知かな?」

と、差し出した写真を見た私は、驚いた。
その写真の女性は、妻にそっくり、いや妻だったのです。

私「あっ、妻です」

刑事「ちょっと表まで、いいかね!」
そして、私は病院の外に連れて行かれた。

私「妻がどうかしたんですか?」
刑事「妻?・・・まあ、いい! 実はこの女性、ある事件にかかわっているんだ。
最近、会ったのはいつだね?」

私「最近って言うか・・・、それが、いろいろとありまして・・・」

そう言うと、刑事はまた1枚の写真を差し出した。
刑事「この男を知っているかね?」

その写真を見た私は、また驚いた。
私「こ、この男は・・・・」
そう、その写真の男は、私が家に戻った時に妻と居た男だった。
やっぱり、あの出来事は、夢じゃなかったんだ。

私「この男、何者なんですか?」
刑事「この女性の旦那だよ!」

私「えっ・・・」
自分の妻に男が・・・

私「刑事さん、私が本当の旦那なんですよ。この男に会わせて下さい!」

そういうと、急に険しい顔になり、こう言った。
刑事「この男、先ほど別の病院で息を引き取った。死因は、末期の癌だったそうだ。」

私「えっ?」

刑事「本人には、胃潰瘍としか言ってなかったようで、しかも、安心させるために、あと1週間で退院できると言っていたそうだよ。
数日前、家族の最後の長居だということで、家に戻っていたそうだ」

私「胃潰瘍で入院・・・・しかも1週間で退院予定・・・・」

刑事「亡くなった時、病室に残されていたメモに、ここの病院の名前と君の事が書かれていたんだ」

それで、私を訪ねてきたという事か。
しかし、胃潰瘍・・・引っかかるな!

刑事「この女性、ある人物から、捜索願いが出てるんだ」

私「ある人物って?」
刑事「これがまた、この女性の旦那という男からなんだ。
捜索願いが出たのはいいが、この男も行方不明になっている」

しかし、何人の男を作ってるんだ、あいつは!
今まで何も知らなかったぞ!!

私はこの時点で、なんとなく、理解できてきたような気がする。

私が留守なのを理由に浮気相手を連れ込んでいたのか、しかも他にも男が居たなんて!
でも、何で癌に侵されている男となんか・・・
保険金目当てか・・・!

私「刑事さん、実は私は一週間、家を留守にしてたんですが、先日家に戻ると妻とこの男がいたんです。
もしかしたら、私の家に行けば手がかりが判るんじゃないかと。」

そう言って、私の家まで同行して頂き、玄関先まで着いた。
先日、いきなり鍵が合わなくなったので、鍵を変えられた可能性もあるが、私の家に間違いないのだ。

で、恐る恐る鍵穴にキーを通してみた・・・開いた!
やっぱり、私の家だ。
そして、中に入ると、何事もなかったかのように部屋は整然としている。
ふと、テーブルの上を見ると1枚のメモが・・・
そう、私が家を出るとき、妻にあてた手紙だった。
そのままの状態で置かれていた。

しかし、部屋のどこにも妻や子供は居ない。

私「刑事さん、何かわかりますか?」
と、言おうとしたとき、部屋の中を見渡して、不思議そうな顔をしていた。

刑事「同じだ!まったく同じだ!同じ部屋だ」
私「刑事さん、同じ部屋ってどういうことですか」

刑事「先ほど亡くなった旦那、いやこの男の部屋とまったく同じなんだ」

では、私が初めに戻った家というのは、この亡くなった男の家だったのだろうか?
しかし、ここは私の家のはずだ。

これは、どういうことなんだ。
妻の隠された謎とその男たち!

謎は、さらに深まるばかりだった。

<~続く~>
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